学会シンポジウム「再考:重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」:第59回日本未熟児新生児学会学術集会の参加報告(その3)

の最終日の午前中の報告です。

自分は今回の学会の役目は
シンポジウム「再考:重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」
のシンポジストを努める事でした。

大阪発達総合療育センターの船戸先生に発表をお奨めいただいて
の役目でした。


医療の現場でおいての話し合いを大切にしたいと思っている様々な
人たちが集ったシンポジウム会場でした。


シンポジストの最初は横浜労災病院の松井先生でした。
当院と診療連携した患者さんの診療を通して横浜労災病院の
スタッフの皆さまがお子さんとご家族をどう支えていけるかを
悩みながら病院として取り組んだ事を報告しつつ、
「患者さん御家族と医療者の話し合い」への大切に考える事を
松井先生が報告してくださっていました。

日本各地のNICUでも悩みながら診療したり、どう話し合っていったら
いいのだろうか?と悩む部分を掘り下げてくださったきっと多くのNICU
医療者に共感する内容だったかなと思いました。

「INTACTプロジェクトでも学んだ事だが、ガイドラインをどう使っていくか?
コミニケーションやファシリテーションなどの話し合いや意見をまとめていく
姿勢などを自分たち医療者は学んでいく必要があると思える」という
趣旨の言葉が大変共感しました。

2番目の発表者が自分でした。
松井先生に続いて発表できる機会を嬉しく思っていました。

自分も今回のシンポジウムは血圧が上がるように感じる難しい内容であり
どう話したらとずっと悩んできました。

今回、こういうシンポジウムに出ようと思った契機は船戸先生に
当院のNICU卒業生の御家族が

という体験記を<心に残る医療体験記コンクール>に自発的に応募され、
日本医師会賞を受賞されたことを含めて、どんな診療をしたのかということを
このシンポジウムでお話ししてはどうかというご提案からでした。

上記の体験記の御家族のシンポジウムでの追加発言を船戸先生が
ご提案していただき、上記の御家族も発表したいと想ってくださり、
学会長やシンポジウムの座長や発表者の
先生方がお認めくださり、<医療者と患者家族で一緒に発表させていただく>
という機会となりました。

NICUのいのちの授業」を神奈川県で患者家族の皆様と
一緒に生徒さん達に話してきた事がある
自分としては、
『話し合い」がキーワードだとしたら、話し合った者同士で
一緒に発表することの意義もあるのではないかと考えて、
誤解を怖れずに御家族達と一緒に発表の場に立とうと覚悟を決めてきた自分でした。


このシンポジウムには患者家族会の方の素晴らしく感じるご発表も
ありましたが、医療者がたくさん居る中で患者家族の方が混じって
自分の経験や気持ちや考えを伝えようとすることには覚悟がいる
ことだと想います。自分の横で発表の順番を待っていた
こはるさん御家族にも尊敬を感じていた自分でした。

こはるさん御家族とともに、自分たちのNICUで天使になられた
お子さん達へのご供養のつもり、
同じようなお話し合いをしてきた御家族たちと
NICUスタッフ達とのグリーフシェアの一環のつもりで
自分の話をしてこようと思い話してきました。


タイトルは上記としました。口演ではこのタイトルの意味を伝えきれませんでしたが
その部分を少し補完させていただきます。

これはある小説に書いていて大変共感したのですが
英語の<END-LIFE CARE>という言葉を日本語訳したときに
<終末>と訳した人が居るが、<有終>という言葉のほうが
適しているのではないかとう考えに共感した自分です。

<有終を讃える><天に還る>という宗教観?よりは
<終末があると考える宗教観?>は死をタブー視する日本の文化につながっている
かもしれない気がする自分たちでした。終末でなく有終と訳していけないのだろうか
と想えていました。胎児診断でも新生児のお話でも、
親鸞の言葉ではないですが「困難な中にも光はあり、その光をどう大切にするかを
考えていきたい」という気持ちを伝えていきたいと想って話していますが。。。

<終末>なのか、<有終を飾る><有終の美>、日本人にも
有終を大切にする気持ちはあったはずで
終末期医療という言葉は使いたくないと
思えてきた自分たちでした。

グリーフシェアという言葉は学会誌に教育セミナーでチューターをさせていただいた
玉置先生との出会いにもなった
後輩世代の先生方が提言した言葉です。以下にその論文を掲載しています。

ケアするという部分に上から目線がないか? シェアする
一緒に考え、一緒に感じていく姿勢を大切にしたいという意味で
当院にご縁がある新生児医療仲間の間では
グリーフケアという言葉からグリーフシェアという言葉を
会えて使っている最近です。

タイトルのスライドは
という記事で書かせていただいたお写真を掲載させていたただ来ました。
はるくんへのご供養とも思いたい気持ちがあって御家族とNICUスタッフで
限りあるしれない時間の中で<カンガルーケア>などを繰り返していた日々の
写真をタイトルに使わせていただきました。

講演の前半は

病院と福祉施設と教育施設が3つ揃っている世界でも稀な
特徴を有する自分たちの病院を紹介しました。最近、このことの
意味を大きく実感する自分たちです。

当院は在胎23週の早産児、左心低形成症候群などでも
9割以上のお子さんが救命できる治療成績を報告しています。
9割以上助けられるからといって自分たちが素晴らしい事を
しているだけ言い切れるかというと助かるようになったからこその
次の悩みを御家族や医療者ももつことがあるということも感じています。

のように重心施設の先生方と一緒にお話しする機会も多い自分たち
であり、神奈川県全体の重症のお子さん達の在宅医療や福祉や教育などを
担う自分たちだからこそ、救命医療だけを極めて行けばいいのかを
悩む部分もあるのかなと思います。

そして9割助かるという中には、1割のお子さんは
NICUや小児病棟で有終を迎えるお子さんと御家族がいることも
実感しています。その1割のお子さんと御家族にも想いを馳せていけたらと
思えている自分です。

病院をあげてみんなが参加したいと自発的に集まる

合同慰霊式の様子を紹介したり、


なぜか、救命医療の事よりも、どの診療科も<有終の医療>に
関する出版を考えている、伝えたいという願いを持つようになっている
病院の歴史や文化があることを伝えた自分でした。


緩和ケア普及室が開設され、
専属スタッフがいて、多職種、多診療科で毎月に近く集まって
病院全体の緩和ケアを話し合っている現状を伝えつつ、
緩和ケア普及室を中心に病院全体のスタッフを対象にした
緩和ケアに関する勉強会を繰り返し開催している病院の
雰囲気をお話ししました。

その上で緩和ケア普及室主催の講演会に
大阪発達総合療育センターの船戸先生に招待講演をお願いした

の講演の内容をお話ししつつ、それを実践しようと目指している当院の
診療を御家族とどんな風に話し合っているかにスポットを当ててお話しさせて
頂きました。

出生前診断からアドバンスケアプランに沿って事前に治療やケアの
話を文章化して話し合い、生後は人工呼吸器やNO吸入療法などの
救命医療を継続しながら、カンガルーケアや沐浴、散歩、産科スタッフと
NICUスタッフが垣根を越えて母児同室で医療や看護を続けたお話などを
させていただきました。

講演の最後はこはるさん御家族にいただいた写真をスライド化して
それを掲示しながら、こはるさんとパパさんとママさんに感じた事を
話していただきました。お話しする内容はお二人にゆだねて自分たちの
講演を締めてくださいねと伝えていた自分でした。3人でこはるさんの
グリーフシェアをここでもしましょうと話し、信じて託した自分でした。


自分も一緒に発表していたので写真など撮れなかったのですが
こはるさんにパパとママさんは素敵だねと伝えたかった1分30秒の
ご発表でした。

写真は以下です。御家族が愛情を持って
撮られていたお写真の数々だなとスライドを作りながら感動していた前日の晩でした。
当院で同じような経験をされた御家族には共感する内容かなと思えました。

をお読みいただいた上で下記のお写真をみていただけたらと感じております。

限りがあるかもしれないから大切にしましょうと言われた時間の中で
看護師さん達と話し合いながら、
「そのとき、そのときで
こはるがして欲しい、して欲しくないということを2人で
考えながら過ごした日々でした」というママさんから聞いた言葉を
実感した下記の写真でした。






パパさんと発表の途中でスライドをみながら、発表が止まって
しまう時間があって、感極まっていたのかなと後で聞いたら、
「大画面に上映されたこはるさんの顔に感動して、かわいいなあ」と
思っていたら、発表にきていたことを忘れてしまう時間になったという
言葉に、この御家族の想いを改めて素敵に感じました。












発表の最後の言葉は
パパさんの
「話し合いがあったおかげで、娘にとっての幸せとは何か?という事に、
不安な心境の中でも、私達なりにしっかりと向き合う事ができたと思っています。」
ママさんの
「さまざまな選択があった中で、結果として、母子同室など、家族らしいあたり前の温かい時間が過ごせた事は今でも私達の支えとなっており、あの時に、娘のいのちとしっかり向き合うことができたのは、先生方と一緒に娘のことを考えられたことが、とても大きかったのだと感じています。」
で講演を終えた自分たちでした。

自分たちのご発表の後は
NICU患者家族でその後も倫理学などを学ばれている方から
話し合いにおいての御家族の想いや医療者への問題提議を
踏まえて気づきをいただいた講演。

学会の倫理委員会の先生方から
「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」
の全国のNICUでの活用状況や今後への課題などについてのご講演がありました。
これも今後、私たちは何を目指すべきかという事を考えさせられる素敵な
講演に思えました。


最後は指定発言で船戸先生が、NICUで働く医療者の倫理教育などへの
提言がありました。

5つの講演の後は会場の参加者の皆さまを
交えての総合討論で大変貴重に思えた意見交換の場だったと思います。
同時開催の看護学会が終了していた学会3日目だったため
看護師さんが参加しづらいシンポジウムという部分を今後
改めてまた開催できたらという意見が多かったのも大変共感いたしました。
自分の病院でも発表を看護師さん達に改めて後演会できたらと
思う自分でした。

総合討論の自分は
「今回のシンポジウムで改めて感じている事は3点です。
1つめは情報の伝え方の大切さ、自分の施設、日本の他施設、
世界の他施設などでの行われている診療とその救命率や
その後の生活などの情報提供、自分の施設で赤ちゃん達のよりよい
と思えている診療の伝達、やるべき治療と選択の余地があると思える
診療のご説明、などをしていくことの話し合いの大切さを感じた事。

アドバンスケアプランは文章を作るのが目的でなく、
文章化することでより深く具体的に話し合いを進める上で
有用な考え方と感じている事。

2点は医師、看護師、患者家族という区分でなく、話し合いの
姿勢や進め方を一緒に確認し合う事、自分たちが出会うご縁に
なった子ども達に対して、その状況の中でよりよいと想える
診療は何かを一緒に考えていける話し合いの仕方、意見のまとめ方を
考えていきたい。

NICUの中だけの考えや倫理観で診療を語り合わず、
その後の医療を支えてくださっている医療者を交えて
NICUの診療のあり方を考えていく事が、その後のお子さん達の
生活を考える上でも大切な気がしています。」
というような意見をお話しさせていただきました。


シンポジウム終了の後に、こはるさんの御家族に声をかけて
くださった学会の諸先生方と記念撮影です。
こはるちゃんのパパとママさん、一緒にこはるさんや
関わったスタッフのことを話せて嬉しい機会でした。

よく考えると自分はこはるさんの担当医ではなかったので、正式な場所で
病状説明はしなかったNICUスタッフの1名に過ぎないでしたね。
それでもシンポジウムを振り返りながら一緒に愛媛の時間を過ごせて
いい思い出になりました。ありがとうございました。

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Posted byNICUサポートプロジェクト

Comments 2

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asu**asab*t192*  
No title

こんばんはつーちゃんママです。先生お疲れ様です。私はクリスチャンなので個人的に言いますがキリスト教は有終ではなくてここから命が始まるということなので少し違うかなと思います。気分を害されたらすみません。先生とご両親様の思いが響いて考えるきっかけになるといいですね。

NICUサポートプロジェクト  
No title

つーちゃんママさん、そうですね。不適切かなと想えて少し直しました。こういうご指摘やメッセージありがたく感じます。ありがとうございます。